弾き、弾かれ

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Sabage Braver

○月×日 天候:血風、所により弾雨




…足が動かない、腕も動かない。
平衡感覚も無い、目も霞む。
どうやら床に倒れているらしいと言う事だけは、
頬に伝わる冷たい床の感触で理解できる。

おぼろげな視線の先では、巨大な大蛇に乗った蟲惑的な女が高笑いをしていた。


事の始まりは数時間前、父親が一つの依頼を持ってきた事に始まる。
『閉鎖された某研究所に巣食うリリスを退治する』
という、至極単純な依頼である。
只一つ誤算だったのが、リリスが思ったより頭の回る奴だったと言うことか。
親子三人で乗り込んだはいいが、複雑に入り組んだ施設内の通路に加え、警備システムを掌握してるらしいリリスに一人一人分断され、
気付けばボスの元には一人で誘い込まれた上に歯も立たなかった自分がいる。
防火シャッターを閉められ密室と化した巨大な部屋で、得物の電鋸剣も通じず
、なす術も無く叩きのめされ、床に這い蹲っている。


…悔しい、親父達がいないだけで俺はこんなにも無力なのか。

「あらあらぁ?悔しそうな顔しちゃって。まだそんな顔できるんだ、ボク?」

嗜虐的な笑みを浮かべながら目の前のリリスは俺に向かって歩を進める。
嬲り者にする気か、くそったれ…

「夢も希望も持ってる年端もいかない少年をいたぶっていたぶっていたぶりぬく…なんて快感でしょう♪」

リリスは、倒れた俺の髪をつかんで無理矢理立たせるとニッコリ笑い、

「ねぇボク?ボクの将来の夢は何かなー?」

等と、学校の教師が言うような質問をしてきた。

「き、牙無き…者達…の……防…人に……」

それを聞いたリリスは、ぷっと吹き出し嘲笑し始めた。

「あははははははは!!おっかしい!今の状況を見て、貴方がその防人になれるだけの力があると思うの!?バッカじゃない?あはははははははは!!!」

畜生!畜生!!畜生!!!
今すぐこの女をブッ飛ばしてやりたい所だが、体に力が入らない。

「自らのために力も振るえないなんて、あなたのその夢、『無価値』にも程があるわ」

…ギリッ!と歯噛みをする。
このリリス、親父と同じ事を……
無価値だと!?誰がそんなことを決めた!?
誰が決めるまでも無い、ましてやゴースト如きに決められてたまるかよ!

「あぁ笑った笑った、お礼に、一瞬で殺してあげるわ」

大蛇が首をもたげ、巨大な顎が上下に開いた。
―――畜生!動け!動けよ!
何で動いてくれねえ!!ふざけんな!!

「じゃあ、さような――――ッ!?」

ッキュゴォンッ!

横の壁をブチ破って伸びてきた光が、リリスだけを吹き飛ばし、支えを失った俺は再び床とキスをした。

「何!?何なの!?」

吹き飛ばされたリリスが悪態をつきながら土煙を上げている壁を凝視すると、
そこにはサングラスをかけ、黒いスーツを着た茶色い長髪の男と、白いワンピースに身を包んだ水色の短髪の女がいた。

「お楽しみの所悪いな、死んでもらいに来たぜ」
「ヤッホー!お元気ぃ?」

片手を上げ、龍撃砲を撃った姿勢のままこちらへと歩いてくる親父。
チェーンソー剣を携えて親父に寄り添うように歩いてくるお袋。
そして親父は俺を見下ろし、否、見下し深い深い溜息を一つついた。
それは、期待外れであった様な、心底つまらなそうな、そんな溜息。
親父は俺に興味を失ったのか、体勢を立て直したリリスに目線を移す。

「いやー、お前上手く分断した心算だったんだろ?おめでてーな」
「…何?」
「生憎、俺の本業はコンピュータ関係でね。この程度のセキュリティなら簡単に突破できるのさ。テメエの逃走ルートから待ち伏せさせてたゴーストまで、全て潰してやったからよ」
「だからね、安心して消えていいよ♪」

愕然とするリリス。しかし突然不敵な笑みを浮かべると

「待ち伏せさせてたのがアレだけだったとお思い?おめでたいわね!!」

パチン、と指を鳴らした。
するとどこに潜んでいたのか、大量の剣オオカミ、アリイノシシ、ゾンビ等が突如出現し、俺達を取り囲んだ。

「うっわーベタな悪役パターン。捻れよ」
「『者共!出会え!出会えー!』って奴だね」
「おだまりっ!!」

妙にヒステリックな声を上げるリリスを尻目に、親父は余裕綽々の表情で

「生憎だが、オトモダチが多いのはお前だけじゃねえよ」

すっ、と手を掲げると、近くにいたゾンビが親父の後ろから飛んできた火球に焼き尽くされた。

「な…っ!?」
「テメエらリリスは能力者の気配わかるんだろ?何で気付かないんだよ阿呆」
「あれれー?ひょっとして子供をいたぶりすぎてて油断しまくってたとかー?ぷぷぷ」

そう言う間にも、親父が呼んだらしい『オトモダチ』とやらはぞろぞろ部屋に入ってくる。
その数、5人。

「全く、植松さんてば人使いが荒いですねえ。ま、僕は報酬さえ貰えれば構いませんけどね♪」

長身をチャイナ服にも見える白いスーツに包み、手に装着した篭手から伸びた糸を弄んでいる、胡散臭い笑みの張り付いた黒髪の男。

「全く以って同意します、主…」

白スーツの男に寄り添うように小柄な(といっても俺より大きいが)ゴシックロリータな服に、それに不似合いな無骨すぎる白銀のリボルバーガントレットを両腕に装備した、銀色の髪をツインテールに纏めた人形の様な少女。

「おぅい、植松よー。ものぐさな俺が出向いてやったんだ。それなりに面白れえ事になってんだろうなー?」

紅い、その長い髪も紅ければ着ている着流しも紅い更には瞳まで紅いという赤尽くし、巨大な鎌を持ち眼鏡をかけた豪快な女。

「私は援護しか出来ないから、あまり戦力としては期待しないで頂戴ね」

紅い女とは対照的に、此方は落ち着いた緑の女。いや、髪の色は黒だし瞳は水色なのだが、着ているチャイナ服を初め全体的なイメージが緑なのだ。長く伸ばした前髪で片目を隠し、手には魔導書を持っている。
さっき炎の魔弾を撃ったのはこの人らしい。

「アハーハー!どこのどいつをなます斬りにすりゃいいんで?なぁんてな!」

最後に現れたのは、眼帯をつけ、片手に日本刀と片手に詠唱銃を持った頭にヤの付く自由業風の女。背中には『バールのようなもの』を差している。

その5人が俺達3人の前に展開し壁を作り、親父は掲げていた手を更に掲げ直すと

「Attack!!」

掛け声と同時に振り下ろす。
瞬間―――!
高速で動いた黒髪の男の爆水掌がアリイノシシを消し飛ばし、
ツインテールの少女の龍顎拳がゾンビの胴体に穴を開け、
紅い女のフェニックスブロウが剣オオカミを焼き尽くし、
緑の女の雷の魔弾がゾンビガールを消し炭にし、
眼帯の女の黒影剣がナミダの力を啜る。

「な…なんて事…一瞬で5体…!!」

その勢いは衰えず、自らの手下を次々に屠っていく増援の5人に戦慄を覚え、その場から逃げようとするリリス。

「ふん、賢しいチキンだ」

親父は俺に何かカードのようなものを握らせ、思い切り蹴り飛ばした。
狙い違わず、リリスの進路上にバウンドして着地する俺。

「おい、そのガキがお前の相手だ。始末できたら見逃してやるよ」
「…なんですって?」
「そのガキがお前の相手だってんだよ。命拾えるチャンスだぜ?」
「……っ」

癪に障るが命には代えられないとばかりに、俺へと向き直るリリス。
そこにあるのは只、生への渇望のみ。

「当初の予定は狂ったけど…死になさい、ボク」

大蛇が頭を振り上げた。
まただ、肝心な時に体が動かない。
足も、腕も、言う事を聞かない。
とうにイグニッションは解除されてしまっている。
今の俺は、只の無力なガキに過ぎない。

「名乗りたまえよ。少年」

その顔に笑みを貼り付けた黒髪の男が、糸で妖獣を切り裂きながら俺に言った。

「こういう時は、華麗に復活して名乗りを上げるのがセオリーだと、あなたの父上は仰ってましたよ?尤も、僕には理解の出来ない領域ですがね♪」

と、黒髪が続ける。
(名乗る?俺が?…俺は植松・弾。それがどうした?)
――大蛇が首をもたげる。
思い浮かぶものは、何も無い。
体は、まだ動かない。

「叫びなさい、己の望みを」

ツインテールが黒髪に続く。
(俺は、護る。牙を持たぬ人達を。自分の身を賭して)
――大蛇がその大きな口を開く。
思い浮かぶものは、牙を持たぬ人々。
心に、火が灯った気がする。

「叫べよ、己のエゴを」

紅髪の女が更に続く。
(そうとも、俺が人を護るのは只のエゴ。俺がやりたいだけだ)
――大蛇が威嚇するように甲高く鳴く。
思い浮かぶものは、戦ってきたゴースト。
両手に、力が戻ってきた気がする。

「叫ぶのよ、己の誓いを」

緑の女が更に続く。
(俺の誓い。人を敬い野蛮を尊ぶ。人が人でいる為の誓い)
――大蛇が涎を垂らした。
思い浮かぶものは、結社の仲間達。
両脚に、力が戻ってきた気がする。

「叫ぶんだよ、己の正義を!」

そして眼帯の女が締め括る。
(俺の、正義…俺の…俺の…俺の…)
――大蛇が噛み砕かんと襲い掛かってきた。
思い浮かぶものは、いつも腹を空かせたニット帽の少女。
その瞬間、

魂が、

肉体を、

凌駕した。

「ィイグニッションッ!!」

親父から渡されたカードに封じられていた詠唱兵器が解凍され、俺の体に装着されていく。
展開された武器と思わしき柄を持って、力任せに迫り来る大蛇に振るう。

「な…にィッ!?」

ハンマーによる横からの衝撃によって軌道をそらされた大蛇の首は、俺の丁度真横の床を抉る。
大蛇の頭を下からのスイングで弾き飛ばし、そのままハンマーを振り回し、石突を床に突き立て見得を切る。

「聞けッ!我が名は植松・弾!うぬら銀の雨の堕とし児共に、心より不敬申し上げるッ!!」

白い特攻服を身に纏い、前髪を下ろした為一瞬別人と思っていたのか、
その口上を聞いてリリスは改めて俺をさっきのガキと認識したらしい。
怒りに我を忘れた様子で襲い掛かってくる。

「こぉの死に損ないがァァァァァァッ!!」

単純極まりないその攻撃に合わせる様に、俺はロケットスマッシュを起動する。
奇声を上げながら飛び掛ってくるリリスに狙いを定め、一気に振り下ろす!

「尊野蛮!!」

空気の爆発する音が辺りに響き、鼓膜を振るわせる。
アビリティにより莫大な推進力を得たハンマーは飛び掛ってきたリリスを跡形もなく粉砕し、更に床にも巨大なクレーターを穿った。

「これぞ、我が蛮勇なりッ!!」

爆風にたなびいた特攻服の背中にある『敬人尊野蛮』の刺繍が、輝いたような気がした。
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ふむ

オチてないな。挙句、俺はあまり活躍してお蘭ではないか。

  • 20061203
  • ハジキのパパン ♦-
  • URL
  • 編集 ]
sweepers

お蘭。
なるほど。えーと、我が主が、水練(みれん)忍者で、鳩が青龍拳士ですね。把握。

http://www16.atwiki.jp/sr_archives/を作った方の遥かなる執念に感謝。

この手のデータ集めはイクセスというとある読者参加ゲームの時にやりましたが、本当に手間かかるのですよね。

閑話休題。

名乗り、望み、エゴに従い、望み、正義を見せろ。
さすれば道は開かれぬ。


実に、熱い。ふふ。

まあまあ

息子に脛放り出すのも親の務めってね。
まあ、あの子なら放っといてもかじり尽くすだろうけど。


大般若は、魔剣士×ゾンビハンターでFA?

  • 20061203
  • 眼帯の女@田吾作 ♦wm6RgFN2
  • URL
  • 編集 ]
熱!!

うばあ!かっこええ!?
後、パパンとママンの愛情と性格の悪さっぷりが最高です。

というかゲストの出し方が上手いなあ……

  • 20061203
  • 香の中の人 ♦LEUra8kw
  • URL
  • 編集 ]
Re: Sabage Braver

香の中の人>
あ、初めまして。銀雨やってない鳩と申します。
このたびはトミーウォーカーのゲーム全くやってないのにSSに出していただいて恐縮しております。

えーと、同業他社なのですが、元ネタは多分、
ttp://www.wtrpg.com/axdia/html/pclist.cgi?webid=w3a379

だと思われます。
こういうえにしは大事にしたいのですが、土俵が違うのは、やはり残念なことに思います。
あらためて、初めまして、モーションなしで最短距離を飛んで来る、よけづらさはフリッカーに劣らない鳩です失礼致しました……。

お蘭

「きっちり最低両親やってんじゃねぇか。食えねえ連中だぜ」
「いい、息子さんね。…狙ってないわよ!?」

いい親だねホントに。
毎度sabakuです。わは、やられたよもう。
テンションの持って行き方とか、いやはや愛ですね。
ニヤニヤしながら読んじゃいました。

細かいところですが、セラの緑をわかってくださっててちょっと嬉しかった。

虹子がファイアフォックス×魔剣士ですね。
セラが魔弾術士、…×白燐蟲使いとかにしとこうかな。

きうい神、みれん忍者って何だよ。噴いたよ。

  • 20061204
  • 赤眼鏡・緑女@sabaku ♦L8AeYI2M
  • URL
  • 編集 ]
レスレス

>鳩ちゃん
誤字を弄られたら削除できないじゃないか!!
晒しか!晒しプレイがお好みか!?望む所だ!!(キャストオフ)

>田吾作どん
眼帯の人のジョブはそんな感じ。
ぶっちゃけ本業以外考えてませんでしたよ!

>香の中の人さん
中の人にまでNPCが返信する場所、つまりここ。
あ、愛なんて無いよ!無いんだからな!勘違いすんなよ!
と、ツンデレてみるテスト。

>紅いキツネと緑のタヌキ
レンタル料一日2000円になります(チキチキチーン)

  • 20061207
  • ハジキのパパン ♦-
  • URL
  • 編集 ]
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