弾き、弾かれ

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人に歴史あり

しとしとと雨が降る。

男が二人。

立っている男と、壁に背を預け座り込んでいる男。

立っている男はスーツにサングラス。

座り込んでいる男は神父服。そして、それを赤く染める自らの血。

「無様だな、古強者(アルテンケンプファー)」

サングラスが神父服に言い放つ。

「ええ…全く」

苦笑しながらそれに答える神父服。
手で押さえた腹部からは、止めどなく血が溢れてきている。

雨は、止む気配を見せない。

「俺を庇ってそのザマってのはどういう了見だオイ。恩を売ったつもりか?」

忌々しげに吐き捨てるサングラス。
雨で濡れた髪が肌に張り付いて気持ち悪い事この上ない。

「貴方には解らないでしょうよ。他人の為に盾になる事の出来る尊さを」
「ああ解らんね。力は自分の為だけに使うモンだ。たかだか依頼で一緒になっただけのヤツを危険を冒してまで助けるような奇特な脳は生憎持ってねえ」
「ははは…貴方らしい」

ぐぶ、と血の塊を吐き出す神父服。
それの何が可笑しかったのか自嘲気味に神父服は笑う。

「そうですねえ、貴方達の流儀で言うなら『貸し一つ』と言った所でしょうか?」
「チッ、クソが。だから嫌なんだ、お前等みたいな手合いはよ」
「まあそう言わずに…一つだけ、頼まれてくれますか?」
「……借り一つ作ったままくたばられてもウゼえだけだからな。聞くだけ聞いてやるよ」

ありがとうございます、と首だけ下に動かし感謝の意を伝える神父服。
サングラスは面倒臭そうにしながらポケットの中に手を突っ込みタバコを取り出そうとする。

「私には弟がいます。いたでしょう?今回の依頼で私にくっついてきた少年」
「ああ、あの符術士のガキか。足手纏いだったんで置いてきちまったな」

目を輝かせて兄を見ていた活発そうな少年を思い出す。
手に取った煙草はしけっていたので路上に投げ捨て、サングラスは続きを促した。

「あの子は、符術士一族の間でも蟲飼いと異端視されていた私に分け隔てなく接してくれました。ただ、あの子は少々私に依存しすぎてしまっています…」
「テメェの身の上はどうでもいいんだよ。さっさと用件に入れ」
「…失礼しました。早い話が、私がいなくなるとあの子は思いつめて自殺をしてしまうかもしれません。ですので、あの子に『生きる目標』を与えてあげて下さい。お願いします」

傷ついた身体で座りながら深々と頭を下げる神父服に、サングラスは深い深い溜息をつく。

「…俺流でやらせてもらうぜ?それが条件だ」
「ふふふ…期待して、いますよ…ッ!?」

またも神父服は血の塊を吐き出し、目からも光が失われつつある。
激しく咳き込みながらも、最後の願いを伝える。


「あの子の事を、宜しくお願い致します…」
「ああ、じゃあな」


サングラスの右腕に装備された布槍が振るわれた。









少年は駆けていた、水溜りを蹴飛ばしながら。
少年は駆けていた、敬愛する兄の元へ。
足手纏いだと言われたって構うものか。
あの角の向こうに、兄はいるはず!

「兄さんっ!!」

叫んだ少年の下に何かが飛んできた。
反射的にそれをキャッチする。
それはバスケットボール大の何か。
髪の毛の絡まりついた何か。
赤い液体を滴らせる何か。
敬愛する兄の何か。

「兄さん?」

―――信じたくない。信じられない。

事実から目を逸らすように遠くを見やる。
そこには首の無くなった神父服を纏った人型の何かと、布槍を振るった姿勢のサングラスの男が目に入った。

「…兄さん?」

両手の中に納まった『何か』を見てしまう。

その『何か』には兄の顔が張り付いていた。


「ぇ………!?」


血液が沸騰する。息が詰まる。
胃の中のものを戻しそうになる。
解らない。理解できない。

何だ、これは?

「おい、ガキ」

ふと、声を掛けられる。
呆然としたまま顔を上げると、目の前にはサングラスをかけてスーツを着た男が立っていた。

「ちゃんと持って帰れよ?お前のお兄ちゃんの首をよ」

いやらしい笑みを浮かべながらサングラスの男が言う。

…首?首、持って帰る?誰が、俺が。俺が持っている首。それは、兄の、首。


「うわあああああああああああああああああああっ!!!」


首を放り捨ててがむしゃらにサングラスに殴り掛かる。
何で、兄さんが、こいつが、殺した、首、俺は、殺す!
頭の中に様々な単語が浮かんできては消えていく。
只一つ解る事は―――

「てめぇが!兄さんを!殺したァァァァァァァ!!!」

その拳がサングラスの男の顔を捕らえたと思った瞬間、少年は宙を舞っていた。

「舐めるな、ガキ」

うつ伏せに倒れた少年の背中に容赦なく足を振り下ろすサングラス。
短い悲鳴と共に、少年の肺から空気が逃げ出す。

「悔しいかガキ?大事な大事なお兄ちゃんが死んじゃって悔しいか?」
「てめぇ…絶対に、許さねえ…」

何とか首だけ動かして呪詛を吐く少年の顔に男は唾を吐きかける。

「許さねえからどうする?この状況で?ザコが粋がるんじゃねえぞコラ」
「クソが…何で殺した……何で、何でだよォ!?」

少年は泣いていた。
涙で顔を濡らしていた。

「理由なんざ単純さ。頭数が少ない方が取り分が増えるだろ?算数も出来ねえのか?」
「…ッ!!」

事も無げに語るサングラスの男。
少年は残る力を振り絞って身体を捻り、腕で乗せられている足を打ち払った。

「おぉぅ、まだまだ元気じゃーん♪」
「そんな理由かよ、そんな理由でかよ…」

ゆらりと幽鬼の様に立ち上がる少年。
対してサングラスは飄々と、

「そうだよ、何か問題がぁ?」
「そうか、なら、死ね」

躊躇なく、少年は呪殺符を投げつけた。
狙い違わず、符は男の左胸にヒットする。
更に少年は二枚、三枚と呪殺符を投げつける。
それらは全て男の左胸にヒットした。
死なないにしても大ダメージは免れない、少年はそう思った。

「…今のが必殺か?」
「!!」
「一つ教えてやる。必殺の攻撃が当たったからと言って、相手が倒れてくれるとは限らねえよ」

男の掌が発光する。
咄嗟に両腕で防御の体制を取った少年に凄まじい衝撃が走った。
何とか両足を踏ん張るも、衰える事を知らない光の衝撃は少年の身体を軽々と吹き飛ばした。

雨で濡れた路面をゴロゴロと転がっていく少年を一瞥し、サングラスの男は興味を失ったように背を向け、歩き出した。

「畜生、畜生…」

背中越しにそのような声が聞こえたが、無視した。
これ以上面倒を見てやる理由もない。


「ちくしょぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


少年の慟哭を背に、サングラスの男は悠々と立ち去ってゆく。


(これで、あのガキは俺を殺すまでは自殺なんて考えねえだろ。借りは返したぜ、忌々しい『古強者』よォ…)


取り残されるは少年と、少年の兄だったもの。
そこには雨の降る音と、少年の慟哭がいつまでも響いていた…
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新聞を読みながらふと思い出す

風の噂では銀誓館学園に入学したとかしてないとか…

ま、俺にはさほど関係の無い話だが、な。

  • 20070201
  • ハジキのパパン ♦-
  • URL
  • 編集 ]
素直じゃねぇぇ

これは良いツンデレだな。兄じゃよ

  • 20070202
  • 某山吹レイカ ♦mD5gn8q6
  • URL
  • 編集 ]
超俺流

パパン壮絶だよパパン。

  • 20070202
  • 田吾作 ♦wm6RgFN2
  • URL
  • 編集 ]
俺、参上(電王)

>レイカちゃん
か…勘違いしないでよね!
ただ止めを刺すのがめんどくさかっただけなんだからね!!

>田吾作どん
俺は最初からクライマックスだぜ!

  • 20070203
  • ハジキのパパン ♦-
  • URL
  • 編集 ]
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