弾き、弾かれ

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黒い男と小さな唄

小さいガキを拾った。
それは同情であったかもしれないし興味であったかもしれない。
或いはあのクソ野郎に対するあてつけだったかもしれない。

とにかく、ガキを拾った。

コイツの目は、はっきり言ってムカつく。
何も感じていない。
自分が不幸とか、幸福とかそういったものすらない。
たゆたうまま、流されている。
行き着くところが無い。詰まる所が無い。

つまらない。

別に義理を感じたわけでも、義務感に囚われたわけでもない。
ただ、つまらなかった。
俺が、こいつをこのままにしておくのがつまらなかった。

色んな服を着せた。
色んな景色を見せた。
色んな物を食べさせた。

そして、初めてゴーストと戦わせた。

酷いものだった。
戦闘シミュレーションすらしていないのか、単純に殴る、殴る。
機動力を生かしていない只の攻撃は、装甲の厚い連中には効かない。
分厚い毛皮で覆われた熊の妖獣はいとも簡単にガキを薙ぎ払った。

見ていられない。

なぜ、そう思ったかは自分でも解らない。
きっと、自分のモノを傷付けられた気分になったからだろう。
そうに決まっている。
追撃しようと歩を進める熊とガキの間に、割って入る。

胸ポケットから、模倣したイグニッションカードを取り出す。
先の研究所の戦闘で使用した『ヘレティック』ではない。
表層上ではなく、もっと根源的な自分自身のための装備。
敵性対象完殺用の切り札。

「…イグニッション」

それは黒い甲冑。
身体にフィットした甲殻を纏い、更にその上にまるでコートの様な追加装甲を展開。
右腕には白い布槍を巻きつけ、左腕の装甲内には念動剣を収納している。
闇で出来た黒い骸骨が、そこにはいた。

「『インクウィジター』…推参」

ガキが光の無い瞳で俺を見つめてくる。

「一つ、教えてやるよ。ガキ」

俺は目を逸らすように熊を睨んだ。

「これが、暴力だ」

咆哮を上げて向かってくる熊。野性すら無く、そこにあるのは殺戮の衝動のみ。
大振りな一撃をかわし、布槍で熊の腕を斬り落とした。
すかさず念動剣を射出し熊の胴体に突き刺す。
間髪入れず右手で印を切り、『雷の魔弾』を起動。
いまだ体勢の整っていない熊に直撃させ、その身体を麻痺させその場に縛る。

「てめェ如きに使ってやる連携でも無えんだが、可愛い教え子の前だ。喜んで、死ね」

アビリティ『魔弾の射手』を起動。
目の前に魔方陣が展開される。
バク宙で一度距離をとり、『龍尾脚』を起動。
地を蹴り、猛スピードで熊に突進する。

「『死出の途(デストレイル)』ッッ!!」

突進の勢いを利用し、走り幅跳びの要領で跳躍。
眼前に展開された魔方陣ごと矢の様な飛び蹴りで熊を『撃ち抜く』!
『魔弾の射手』の効果で強化された飛び蹴りは熊を貫通し、どてっ腹に風穴を開けた。

―しかし、熊は残った左腕を振り上げ最後の足掻きを試みた。

(このタイミング、避けられねえッ!?)

ダメージを減らそうと防御体制を取ろうとするも、攻撃後の隙を突かれた為それも適わない。
激しい痛みを覚悟した。

その瞬間、頭上からの衝撃で熊の頭が陥没し、霧となって熊の妖獣は消え去った。




「――ガキ」

俺はイグニッションを解除し、
今しがた熊の頭を陥没させたバットを携え無表情に佇むガキに声を掛ける。

「お前、何で俺を助けた」

戸惑っているのだろうか、ガキは一拍遅れてこちらを見上げて

「よく、わからない」

と、一言だけ言った。

「…そうか」

頭を二、三度軽く叩いてやる。
煩わしそうに目を細めるガキ。

「人生の先輩に対してそのぶっきらぼうな物言いは、気にいらねえ。最後に、です。とか、ます。とか付けろ、な?」
「はい、わかった、です」

その愚直なまでの正直さに、思わず吹き出しそうになった。
その様子を見て、また不思議そうに首を傾げる『小唄』。

「いや、なんでもねえよ。礼は言っておいてやる。サンキュー、な」
「どういたしまして、です」

まだコイツは、面白くなる。
面白くさせてみせる。

「見たかよ。お前が逃した魚は、まだまだでかくなるぜ。なァ『掃除屋』」

横では、相変わらず小唄が不思議そうに首を傾げていた。
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この記事へのコメント

・・・・

・・・萌えた(興奮を隠し切れないにやけた顔で見ている!!)

なんていうか、ほんと皆様のお陰で成長してゆくキャラです。

幸せ者だなぁ、小唄!!
GW明けるまではきっと忙しいので落ち着いたら稼動度合い上げなくてはー。

ありがとうございました!

  • 20070430
  • 月読小唄の中の表情豊か過ぎる人 ♦F9ckFCGU
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